26.堕天使➃

スマートフォンが鳴っている

 

「はーい、もしもーし」

「イージュンか?眠ってた?」

ショーターだ!!

「うん、ちょっとうとうとしてた。あ!そうだ

マリアは無事?!」

「ああ、大丈夫だ。お前にはずいぶん迷惑かけちまったな

そのう、今から部屋に行っていいか・・・?」

 

「いい部屋だなあ…!お、カーテン閉めてんのか?」

ショーターは窓に近寄り、サァッとカーテンを開ける

そこには美しい夕暮れを背景にブルックリンブリッジの

シルエットが浮かびあがっている

「うわぁ…きれい…」

溜息をつきイージュンはその眺めに見入る

 

⦅ぐ~⦆

「うえ!やだ!ロマンチックを破壊する私のお腹!」

ショーターはげらげら笑い背負っていたバックパック

からいろいろ取り出す

「これは姉貴が作ってくれたの、これはアッシュからで

生のオイスターそれから…

姉貴がイージュンなんも食ってねえんじゃないかって

心配してさ、さすがだよなぁ、あんなときでも

そんなことに頭が回るのって」

イージュンはまた涙が出そうになる

きっとお腹が減ってるからだ!!こんなに泣きたくなるのは

 

「ホテルで豪華なピクニックだ!」

 

イージュンとショーターはとりとめのない話をする

これから向かう日本にはイージュンの母方の祖父母が待っていること

そして台湾での暮らしや彼女の父親の話

ショーターは実は自分は堅気の人間ではないこと

アッシュも同様で、そんな状況なのにイージュンに対する

気遣いが欠けていたことを謝罪した

「そんなのなんとなくわかってたよ、ショーター

だから謝らないで」

 

「おい、見てみろよ窓の外、今度はゴージャスな

夜景だぜ。またお腹ならすなよ」

「キャーもう、うるさい!!ショーター!」

 

ーイージュンは窓際に立っているショーターに

そっと近づきそばにある椅子に登る

それから、ショーターの首に後ろから腕を回し

彼の耳にささやく

「ショーターありがとう、本当に楽しかった

私あなたと離れたくないよ…」